抄録
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)によるタンパク質の修飾は真核生物で保存された翻訳後修飾である。GPIアンカー型タンパク質の特徴的な性質として、(1)生体膜上で「脂質ラフト」と呼ばれる特殊な膜ドメインと会合すること、(2)細胞内輸送においてGPI依存的な選別機構が存在すること、等が挙げられる。これらの性質はGPIアンカーの「構造的な物性」とそれを生み出す「改変酵素」、さらには「GPIを認識する分子」によって調節されていると考えられる。GPIアンカー型タンパク質の輸送過程において、GPIアンカーは多段階の構造変化(リモデリング)を受ける。本総説では、哺乳動物におけるGPIアンカーのリモデリング機構とそれによるGPIアンカー型タンパク質の輸送・局在調節機構について述べたい。