2019 年 31 巻 178 号 p. J21-J27
真核生物に保存された分解経路であるオートファジーは、さまざまな細胞質成分を液胞/リソソームへ輸送することにより分解する機構である。オートファジーは、過剰または損傷したオルガネラを除去することや栄養飢餓時にアミノ酸を供給することによって、細胞内の恒常性維持に重要な役割を担うことが知られている。数々の研究により、酵母および哺乳類のいずれにおいても、オートファジーの制御不全はさまざまな生理的機能不全を誘引することが示唆されてきた。オートファジーの誘導レベルは、窒素、炭素、リンなどのさまざまな栄養源の枯渇によって著しく上昇することが報告されている。しかし、窒素飢餓以外の他の栄養源の枯渇により誘導されるオートファジーの制御機構と生理機能についてはほとんど明らかにされていない。本稿では、グルコース飢餓(または炭素源飢餓)誘導性オートファジーの制御機構と生理機能に関する最近の知見に基づき議論するとともに、Saccharomyces cerevisiaeを用いてこれまで行われてきたオートファジー研究の歴史的背景について紹介する。著者らは最近、出芽酵母において、オートファジーがグルコース飢餓時に細胞内のマンノシル糖鎖の代謝分解を促進する役割を担うことを明らかにしている。