2019 年 31 巻 180 号 p. J63-J68
スフィンゴ糖脂質は様々な生理現象で重要な役割を担う、真核生物の細胞膜を構成する普遍的な分子である。スフィンゴ糖脂質の複雑な糖鎖構造はGM3合成酵素(GM3S)やGM2合成酵素(GM2S)を含む糖転移酵素によってゴルジ体で正確に作り出される。我々はマウスGM3SにおいてN末端の細胞質領域の長さが異なる三種類のアイソフォーム(M1-、M2-、M3-GM3S)を同定した。これらアイソフォームは一つの細胞内に共存し、細胞内局在と安定性が大きく異なる。我々はGM2SにもN末端の長さが異なる二種類のアイソフォーム(M1-、M2-GM2S)が存在することを見出した。M1-GM2Sはジスルフィド結合を介したヘテロダイマー形成によって、M2-GM2Sの安定性を上昇させる。これらアイソフォームは、GM3S及びGM2Sの機能を時空間的に微調節し、スフィンゴ糖脂質合成のバランスを維持することに貢献していると考えている。本レビューでは、特にGM3SとGM2Sの細胞内動態とそれらのアイソフォーム産生に焦点を当て、スフィンゴ糖脂質合成の制御機構に関して、最近の我々の知見を紹介する。