Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
ミニレビュー(日本糖質学会編集論文)(日本語)
脱髄における分岐型O-マンノース糖鎖の機能
作田 香子兼清 健志谷口 直之北爪 しのぶ
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 31 巻 180 号 p. J77-J85

詳細
抄録

多発性硬化症などの脱髄疾患の治療において、髄鞘の再生(再ミエリン化)は重要な課題である。N-アセチルグルコサミン転移酵素IX(GnT-IXまたはGnT-Vb)は、生体内で分岐型O-マンノース糖鎖の合成を担う酵素であり、脳で特異的に発現する。GnT-IX欠損マウスは、クプリゾン誘発性脱髄モデルにおいて、野生型マウスと比べて有意な再ミエリン化の亢進を示した。GnT-IX欠損マウスではアストロサイトの活性化抑制と、髄鞘再生を担うオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化亢進が観察され、これらが再ミエリン化亢進の要因であると考えられた。GnT-IXが形成するHNK-1末端分岐型O-マンノース糖鎖は、受容体型プロテインチロシンホスファターゼζ(PTPRZ)を修飾しており、脱髄誘導時、活性化アストロサイトにおいて高発現した。また、GnT-IXはPTPRZの局在を調節することが示唆された。GnT-IX欠損マウスに大きな異常は認められなかったことから、GnT-IXは脱髄疾患において再ミエリン化を促進するための治療標的となる可能性が示唆される。

著者関連情報
© 2019 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
前の記事 次の記事
feedback
Top