2019 年 31 巻 181 号 p. SJ44-SJ45
グリコサミノグリカンの精密構造と活性の相関に関する研究は、世界中の様々なグループが進めてきた。しかし、ヘパリン中のアンチトロンビンIII結合部位の五糖配列に見られるような、厳密な糖鎖配列と生理活性との相関が幾つも見つかったとは言い難い。グリコサミノグリカンのもつ活性は、ある程度ファジーな配列で対応していることが、むしろ分かってきた。ただし、グルコサミン3-硫酸構造に関しては、まだ謎が残っている。この構造は、ヘパラン硫酸多糖鎖中ではマイナーな成分で、せいぜい数%しか存在していない。しかし、その構造を合成するヘパラン硫酸グルコサミン3-硫酸基転移酵素は、ヘパラン硫酸生合成の硫酸基転移酵素としては種類が最も多い。よって、グルコサミン3-硫酸を含む特別な配列が、アンチトロンビンIII結合配列と同様に、特定の機能を担っている可能性がある。また、以前、我々がグリコサミノグリカンオリゴ糖の解析をする際、天然に存在する多糖から単離し、構造決定して使用してきた。しかし、この方法では、比較的メジャーな構造のものしか調べられず、マイナーな特別な配列の構造が機能を発揮している可能性は否定できなかった。現在では、ありとあらゆる配列のオリゴ糖を人工合成したものが利用されるようになり、そのようなライブラリーを用いた機能解析が可能となってきている。