Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
マウス胸腺シアリダーゼ研究の起承転結と今後の課題—AIREを発現する胸腺内B-1細胞Neu-medullocyteを中心として—
落合(雉本) 滋子
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 32 巻 185 号 p. J13-J18

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抄録

細胞膜上のシアル酸の着脱は、細胞間連携の多い免疫細胞にとって大切である。免疫細胞上に中性で働く膜結合性のシアリダーゼが存在すると想定し、マウス免疫組織を調べた結果、胸腺が高い活性を示した。しかし、脊椎動物からクローニングされた4種のシアリダーゼ(NEU1, 2, 3, 4)には、膜結合性で、中性の活性が酸性より高い酵素の報告はない(NEU2は中性活性が高いが、可溶性)。この胸腺酵素の本体を明らかにすべく、私の「マウス胸腺シアリダーゼ研究」は始まった。これは、幾つかの偶然に導かれて、胸腺という魅力的で奥深いジャングルに踏み迷い、最近少し光を見つけた報告である。NEU2様シアリダーゼ活性を強く示す細胞を、マウス胸腺で組織化学的に同定し、Neu-medullocyteと名付けた。それはCD5陽性のB細胞(B-1細胞)であり、その一部は、自己免疫抑制因子(autoimmune regulator)AIREを発現していた。その機能は、おそらく、胸腺でのT細胞の「負の選択段階」で、B-1細胞の特徴である糖鎖抗原を提示する細胞として働き、抗原提示細胞の多様性に寄与していると考えられる。血液型物質のような自己糖鎖抗原に対して自己抗体ができないことが説明できる。今後の課題と共に紹介する。

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