Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
ミニレビュー(日本語)
脳の発生、成熟、老化における細胞外マトリクスの構造と機能の変化
宮田 真路
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 33 巻 194 号 p. J79-J84

詳細
抄録

中枢神経系の細胞外マトリックス(ECM)は、主にヒアルロナン(HA)とコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)で構成される。長鎖のHAはECMのバックボーンとして機能し、複数のCSPGを結合して細胞外空間に高分子複合体を形成する。本稿では、脳の発生、成熟および老化に伴うECMの形成とリモデリングの分子基盤に関する最近の研究成果を概説する。幼若期のECMは、比較的緩く拡散した構造を示し、神経突起形成や神経細胞移動などの発生過程において重要な役割を果たす。生後後期になると幼若型ECMは、成体型の成熟ECMに置き換わることで、可塑的な幼若期の神経回路からより安定した神経回路への移行が促進される。一部の神経細胞の周囲に形成される網目状の不溶性凝集体であるペリニューロナルネットは、成体型ECMの代表例であり、成体脳における記憶の保持と固定化に重要である。さらに、老齢脳で見られるECM分子の老化変性が、加齢に伴う脳機能の低下に寄与する可能性がある。

著者関連情報
© 2021 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
前の記事 次の記事
feedback
Top