Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ムチン型糖タンパク質を用いて生体を模倣した生体材料表面
Lei Shi隅田 泰生
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2000 年 12 巻 66 号 p. 229-239

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抄録

ムチンは高度にグリコシル化されたタンパク質の総称であり、可溶型のものと膜結合型の2つのフォームが知られ、後者は細胞表面を覆う glycocalyx と呼ばれる物質の一部である。どちらのムチンも上皮細胞の表層にある粘膜層の主要な成分であり、溶液/上皮細胞の境界面において重要な役割を果たしている。粘膜層が上皮細胞の非常に疎水性の高い脂質層を覆っているために、上皮細胞の表面は非常に濡れ特性の高い (親水的な) ものになっている。この表面特性と糖鎖側鎖の立体的な効果のため、非特異的な血漿タンパク質の吸着や非特異的な細胞の接着が抑制されている。我々は、ムチンをコーティングすることによって人工的な材料の表面に glycocalyx 構造を模倣し、非吸着性でより生体適合性の高い材料を開発した。疎水性材料の表面上に観測されたムチンの単層は疎水性材料に高い濡れ特性を与えるように表面の疎水性を変化させた。ムチンコーティングにより生体を模倣した表面では、タンパク質の吸着や細胞ならびにバクテリアの接着は非常に低下した。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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