2001 年 13 巻 70 号 p. 167-176
β1,4-N-アセチルグルコサミン転移酵素III (GnT-II) は糖タンパク質アスパラギン結合型糖鎖の生合成を制御する重要な役割を担う鍵糖転移酵素として知られている。この酵素が担う調節の役割は、その反応産物すなわちバイセクティングGlcNAcの糖鎖生合成に対する効果に基づいている。このユニークな構造はコア構造の形成に関与する他の酵素に許容されないため、これらの酵素の反応が阻害されてしまう。このような抑制的な制御は、バイセクティングGlcNAcの性質やGnT-IIIの広い基質特異性ために起こるのである。GnT-IIIの過剰発現や異所性発現は細胞機能に様々な重要な変化をもたらすが、いくつかの場合を除き、これがバイセクティングGlcNAc残基の直接的な関与であるか、あるいは生物学的に重要な糖鎖構造の合成阻害によるものであるかはわかっていない。しかし、GnT-IIIによる著しい構造的な変化が細胞に生物学的な変化を引き起こすことは確かなようである。このような知見は、GnT-IIIやバイセクティングGlcNAcが細胞の機能に重要な役割をもつということや、N-グリカンが様々な生物学的な現象と関係していることを示唆する。