Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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発生過程における複合糖質の機能解析
ショウジョウバエからのレッスン
Scott B. SelleckHiroshi Nakato
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2004 年 16 巻 88 号 p. 95-108

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抄録

複合糖質研究は今、新しい時代に入った。これらの分子の、組織中における機能解析が特に重要になってきたのである。この情報は、これらの分子がどのように病気に関与するのか、そしてこれらの分子をどのように操作し人々の健康に役立てるのか、といったことを考える上で欠くことができない。複合糖質機能に関する洞察は、意外な生き物、特にキイロショウジョウバエから得られている。ショウジョウバエは、きちんとひとそろいの複合糖質を持ち、これらは脊椎動物のものと保存されている。また、この生き物の研究には様々な発生遺伝学的手法を用いることができる。このような条件によりショウジョウバエは、複合糖質という多岐にわたる、そして機能的に興味深い分子の役割を理解する上で、極めて優れたモデル系となっているのである。発生遺伝学は、生化学、構造生物学、分子生物学と組み合わせることにより、複合糖質の完全な理解を助けるだろう。そしてその情報はそのまま、ヒトを含む、他のシステムや生物へ応用することが可能なのである。どのようにして複合糖質がこれにリンクするタンパク質や脂質の活性を変え、シグナル伝達や発生過程のパターン形成に影響を及ぼしているのか、という点を理解することが現在の大きな課題である。また、糖鎖により制御される細胞の活性も、やっと解析が始まったところにすぎない。例えば、プロテオグリカンはどのようにしてマトリックス中のモルフォゲンのレベルに影響を与えるのだろうか? この、パターン形成に欠くことのできない分子の、安定性に影響するのであろうか。もしくは、そのエンドサイトーシスや拡散を調節するのか。ショウジョウバエ研究の様々な技術によって、これらの疑問の答えが得られるであろう。そして、ショウジョウバエは複合糖質の機能を生体レベルで理解する上で、今後も役に立つに違いない。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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