Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ウィルス感染におけるABO組織-血液型抗原の役割
Kenth GustafssonAntoine DurrbachRobert M. SeymourAndrew Pomiankowski隈本 洋介
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2005 年 17 巻 98 号 p. 285-294

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抄録

タンパク質や核酸と比べて、糖鎖は潜在的により大きな多様性を持つことができる。末端糖鎖の多様性は、バクテリアとヒトのように離れた種間にも、また同一種の中でも存在する。このような広い多様性が存在する理由については依然として不明である。この中には、多型性を示す糖鎖末端のグリコシレーションのうち最も良く知られた例であるABO式組織-血液型抗原がある。粘膜表面のABO抗原に対して各々の病原体が異なった結合性を示すことに着目して、感染症と血液型抗原との関係が多数報告されている。しかし、宿主の細胞と同様の組織-血液型抗原は、宿主によって決定される抗原としてウィルス上にも存在することがある。新たな宿主に侵入すると、ウィルスは自身の持つ組織-血液型抗原に特異的な自然抗体と遭遇するようである。これによってウィルスの直接的な中和が増強されるのみならず、ウィルスに対する特異的な免疫応答も増強されるものと我々は考えている。モデル化研究の際にこのような病原体との相互作用を考慮すると、ヒトの集団で特徴的に見られるABO血液型の頻度を2種類の選択圧によって説明することができ、さらに末端糖鎖の多型が進化してきた様式と原因を説明できる。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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