抄録
血管中を運ばれる正常および腫瘍細胞血管から外に出る現象には、内皮細胞の細胞外基質(ECM)中のヘパラン硫酸(HS)の分解が深く係わっている。この分解をするのはHSの鎖の中の特別な場所で分解をするエンド-β-グルクロニダーゼ(ヘパラナーゼ)である。ヘパラナーゼによるECM中のHSの分解はブラスミノーゲンアクチベーターで活性化され、天然のヘパリン、低分子の抗凝固活性のないヘパリンや、化学修飾したヘパリンにより阻害された。これらのヘパリン分子種は腫瘍の転移頻度を下げ、自己免疫疾患の程度を軽減した。血管新生を促す塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)は角膜や血管などの基底膜に存在し、従って、ECMにbFGFは貯えられているものと思われる。in vitro でも in vivo でも、ヘパラナーゼ処理によりECMから活性のあるbFGFが遊離される。同様に、組織中の細胞は自前のヘパラナーゼを用いてECMからこの活性ある内皮細胞成長因子を遊離している。このように、ヘパラナーゼによるECM中のHSの分解が、正常および病態的状況の両者で細胞の浸潤と血管新生に役立っているらしい。私達は、内皮細胞成長因子がECM中に貯られることで、毛細血管の成長を制御するという新らしいメカニズムがあることを提唱している。正常な状態では、これらの成長因子は血管内皮に作用しないように制御されているが、ECMに乱れが起こると(成長因子が遊離されて)局部的に内皮細胞増殖が起こりそして血管新生が行なわれるという考えである。