抄録
リソゾームヘ選別されるタンパク質 (リソゾームタンパク質) は粗面小胞体で合成され、その後分泌されるタンパク質と同じ経路を暫く辿る。ゴルジ体に輸送される過程でマンノース6-リン酸残基 (M6P) が、可溶性リソゾームタンパク質のN-結合糖鎖に結合し、選別シグナルとしての役割を果たす。ゴルジ体においてリソゾームタンパク質はマンノース6-リン酸受容体 (MPR) に結合することによって分泌経路から分離される。受容体リガンド複合体はクラスリン被覆小胞を経由して酸性条件下にあるプレリソゾーム区画へ運ばれる。そこでは、低いpH条件下にあるため受容体リガンド複合体は解離する。続いてリソゾームタンパク質は密度の高いリソゾームヘと選別される。一方、受容体はゴルジ体あるいは、形質膜へ戻り、次の輸送に利用される。細胞外に存在するM6Pを有するリガンドも形質膜に存在するMPRによって細胞内へ取り込まれる。分子量300Kと46Kダルトンを有する二種類のMPRが知られている。これ, らはM6Pを有するリガンドに対して類似の結合特性を示すが、細胞内でのタンパク質の選別には主にMPR300が関与している。さらに、MPR 300のみが細胞表面から細胞外に存在するM6Pリガンドをエンドサイトーシスにより取り込む。このMPR 300は多くの生物種に存在し、インシュリン様成長因子II (IGF II) に対する結合部位も有している。