抄録
グループB連鎖状球菌 (GBS) はグラム陽性で細胞表層に莢膜をもつ細菌であり、ヒト、特に新生児に病気を起させる。GBSの病毒性は主に、GBSの細胞を覆う莢膜多糖による。稀な例を除き4種の血清型の莢膜多糖 (Ia、Ib、II、III) がGBS疾患の原因となり、新生児でのGBS感染の3分の2近くは、III型の多糖を持つ系統による。GBS疾患の幼児の母親の、莢膜多糖に対する抗体のレベルは低いか測定にかからない程低い。ヒトに精製した多糖を接種することにより、多糖に特異的な抗体のレベルを上げることは理論的には可能である。しかしながら、他の多くの細菌の多糖と同様に、成人ではGBSの多糖の免疫原性は低い。最近の研究は、III型の糖鎖をそのまま、或いは誘導体として、破傷風トキソイドと結合させ、III型多糖の免疫原性を高めることに集中している。III型の多糖やオリゴ糖と破傷風トキソイドを結合させた色々なデザインの結合ワクチンが造られ、それらの免疫原性が実験動物で試されている。結合のさせ方や多糖の大きさが異なるにもかかわらず、GBSのIII型の糖結合体は全て、結合させていないネイティブのIII型の多糖と比べて、免疫原性が高かった。