Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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抗体軽鎖の糖鎖構造、機能およびその細胞工学的改変
H. TachibanaH. Murakami
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1994 年 6 巻 32 号 p. 465-475

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抄録

免疫グロブリンは重鎖及び軽鎖からなる糖タンパク質であり、その糖鎖は重鎖の定常領域に存在している。通常、軽鎖には糖鎖は存在しないが、なかにはその可変領域に糖鎖が結合しているものがある。本総説では免疫グロブリン軽鎖に結合した糖鎖の構造、機能及びその改変について述べる。我々はそうした軽鎖をハイブリドーマの産生するヒトモノクローナル抗体の中に見いだした。この抗体は肺腺がんと反応し、その軽鎖の超可変領域に糖鎖が結合していた。この軽鎖のグリコフォームの一つに、ヒト免疫グロブリンでは稀なハイブリッド型糖鎖が結合していた。こうした可変領域に結合した糖鎖の役割を明らかにするために、軽鎖に結合する糖鎖の修飾を試みた。コンカナバリンA耐性ハイブリドーマで産生された軽鎖の糖鎖変異、およびそのグリコシダーゼ処理は、抗体の抗原結合性に変化をもたらした。軽鎖の糖鎖を改変することで、抗体の抗原結合性を修飾すべく、培地中のグルコース利用性の影響を検討した。ハイブリドーマの培地中での単糖利用性を制御することで、産生抗体の抗原結合性が増大した。一方、動物細胞による糖タンパク質の糖鎖修飾はその培養環境の影響を受けるので、その糖タンパク質糖鎖の正真性、均一性を維持することは特に重要である。軽鎖の糖鎖修飾において培地中のグルコースレベルの変動に寛容な細胞株をレクチン耐性変異細胞の中に見い出した。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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