抄録
近年,利便性に優れ,環境にも配慮した先進的エアモビリティが世界的に注目されている。本研究では次世代エアモビリティとして垂直離着陸(eVTOL, electric Vertical Takeoff and Landing)航空機をエアタクシーサービスに利用することを想定したうえで,機体開発コストと商用サービス運航コストに対して推算を行うことを目的とする。機体開発コストに関しては費目毎に統計式を用いた。損益分析においてeVTOLの生産機数と収益性を考察した。その結果,製造労務費と材料費は開発費に大きな割合を占め,eVTOL機の開発コストは製造数と慣熟率に強く依存することが分かった。設計,製造,設備の自動化は,数量効果を改善し,開発コストを削減することが期待される。一方,エアタクシー・サービスとした運航に関して費目構成を分析し,運航コストを試算し,コスト削減のための提案を行った。運航コストに最も大きな影響を与える要因は資本コストと人件費である。分析した結果,無操縦士飛行が操縦士飛行より27%運航コストを削減し,陸上輸送と競合する価格を提供できることが分かった。また,リース利用より固定費の割合を減少することで,損益分岐点を低下させ,運営リスクを低減できることが示唆された。