抄録
近年,防災分野におけるドローンの活用は日本国内で急速に普及しており,特に地震や津波,土砂災害など,災害直後に人が立ち入ることが困難な被災地において,短時間で俯瞰的な情報を取得できるという利点から,運用が増加している。災害時においては,迅速な被災状況の把握と救助活動の効率化が求められるが,日本で広く導入されている災害対応用ドローンの運用方法は,同様に災害が頻発
するインドネシアにおいては未だ遅れており,ドローン運用に関する体系的な研究や議論も限られている。さらに,日本国内においても,災害時のドローン運用法は体系的に確立されたものがなく,様々な視点からの使用法や新技術に関する議論がなされているのみである。このため,体系的に開発された災害時のドローン運用法をインドネシアに導入し,その有用性を実証することが必要であると考えられる。本研究では,災害時におけるドローン運用法を開発し,インドネシアにおける運用実態を調査することで,その有用性を明らかにすることを目的とする。調査の結果,ドローン運用法に関する講義および防災訓練に参加した者は,災害時におけるドローン活用の必要性を認識し,ドローン運用法に対して高い評価と期待を示した。この結果から,災害時におけるドローン運用法が有用であることが確認された。災害時のドローン運用法は,新しく開発された手法であり効果的かつ効率的で信頼性の高い災害時のドローン活用のために必要である。しかし,操縦に対する不安感や関連機関との調整は今後の課題として挙げられており,いつ起こるかわからない大規模災害に備え人材育成や事前調整が重要となるこのような議論は,災害が非常に多い日本とインドネシアにとって適切な災害対策環境を生み出し,相互協力によって防災・減災の一助となると言える。