抄録
リノスポリディオシスはRhinosporidium seeberi (Seeber, 1900) によってひき起こされる慢性肉芽腫性疾患である。本病原体はまだ分離培養されておらず, 生活史は不明であるが, 一部では藻菌類に属すと言われている。易出血性, カリフラワー状の肉芽腫は主として鼻腔, '咽頭に生じるほかに稀には眼球結膜, 陰茎, 尿道などを侵し, 臓器散布例の報告もある。スリランカやインドでは風土病的に比較的頻繁に見られる疾患であり, 他の熱帯, 亜熱帯からも散発例が報告されているが, 本邦からの報告例はない。
我々は1979年から1984年に亙ってケニア西部, リフトバレー, ウェスタン, ニヤンザ州の外科生検材料を病理組織学的に検索するとともに疫学的調査を行い, ケニア西部においてリノスポリディオシスは高温で比較的湿潤なビクトリア湖沿岸, および湿潤な高原地帯であるリフトバレー州中央部に多発し, その感染経路は水系であろうと言う結果を得た。