抄録
ヒトと水との接触行動の観察と尿検査 (虫卵検査) をケニア, クワレ地区, ムワチンガ村というビルハルツ住血吸虫症流行地で行った。年齢による住民と水との接触量の変化は, 住血吸虫症患者の年齢による感染の強さの変化と, 全く同じではないがよく似る。そこで感染の強さと水どの接触量を, 数学モデルを介して, 定量的に比較してみた。寄生虫体数, 雌雄抱合虫体数, 雌雄抱合虫体を有す住民の割合を, 水との接触行動観察データ, 年罹患率, ビルハルツ住血吸虫成虫の推定生存期間より, 虫体の侵入死亡に関する数字モデル, immigration-deathmodel, その他の式を用いて算出した。これらの推定値を, 調査地住民の感染率と感染の強さと比較した。その結果, 推定値は観察値と直線関係を示した。これらの結果より, 我々はビルハルツ住血吸虫症流行地で普遍的にみられる, 年齢一虫卵排泄曲線の特長的型は, 単に年齢による住民と水との接触量の変化によって, うまく説明出来ると結論する。