Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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培養熱帯熱マラリア原虫における生殖体形成および受精に対する電子顕微鏡的観察
小野 忠相中林 敏夫大西 義博
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1991 年 19 巻 1 号 p. 25-31

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抄録
熱帯熱マラリア原虫赤内型のin vitro培養に際し, これに抗熱帯熱マラリア原虫抗体産生ハイブリドーマ細胞の上清液を加えて誘発した生殖母体を長期培養すると, 生殖体形成, 受精, 融合体形成, 虫様体形成と発育が進む。この論文では生殖体形成中の生殖母体, 雄性生殖母体による雌性生殖体侵入, 更に雌雄生殖体による受精を, 電子顕微鏡によって観察した。その結果, 次の所見が得られた。
1. 生殖母体の2枚の細胞質膜の中, 内膜が伸展して生殖母体の細胞質の一部が分割される。そして, この部分は生殖母体を包んでいた赤血球膜が生殖母体から剥れる時, 赤血球膜に包まれて虫体から培地中に放出された。
2. 雄性生殖体は雌性生殖体侵入に際して, まず雌性生殖体細胞質外膜下に入り, その後雄性生殖体膜と雌性生殖体細胞質内膜の融合によって, 細胞質に入るように思われた。両膜の間にmacular desmosomeが見られた。雄性生殖体は, 雌性生殖体に入ると核部分がはずれるが, それを容易にすると思われる構造が見られた。
3. 雄性生殖体の核を包む膜と, 雌性生殖体の核膜の融合, すなわち受精を形態的に初めて観察することが出来た。雌性生殖体細胞質に核が2つ認められ, 多受精の可能性が示唆された。
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© 日本熱帯医学会
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