Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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西部ケニアにおける小児の風土病型リンパ節型カポシ肉腫
小室 哲鳥山 寛
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1991 年 19 巻 3 号 p. 251-263

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抄録
風土病型カポシ肉腫 (KS) は赤道アフリカに多く見られ, 比較的小児にも好発し, また, リンパ節に発生するものも多く認められてきた。今までの我々の調査でも, 小児に発生するKSは, 主にリンパ節に初発していた。しかし, これらのKSに関する組織学的検討は, ほとんどなされていない。今回我々は, 小児KSのうちリンパ節に初発した症例22例を用いて, 地理病理学的, 組織学的, 免疫組織学的な検索を行い, その民族, 地理的分布, 組織学的形態像, 細胞の由来;発生機序に関して検討した。その結果1) 風土病型KSの好発年齢には, 小児期と中高年齢期の二峰性が見られ, 初発部位は小児では主にリンパ節で, 多発する傾向が見られ, 中高年齢期では四肢の皮膚に多く見られた。2) 小児リンパ節型KSは, 成人皮膚型KSと同様にLuo族に多く見られ, 高温で多湿なビクトリア湖周辺に多く, 乾燥した地域にはまれであった。3) KSはリンパ節のpara-cortical areaより発生し, reticulin networkに沿って増生していた。4) KSの病変部はspindle-shaped cell, macrophage-lik ecell, immature endothelial cell-like cell, mature blood vessel, lymphatic vessel, postcapillary venuleなどの細胞からなっていた。5) 悪性を示唆する細胞異型, 異型核分裂像, 腫瘍による増殖性懐死, リンパ節被膜外への浸潤像などは認められなかった。6) 免疫染色およびレクチン染色では, 内皮細胞のマーカーであるFactor-VIIIRa, UEA-1はmature blood vesselなどのendothelial cellに陽性で, spindle-shaped cell, macrophage-like cell, immature endothelial cell-like cellは陰性であった。間葉系細胞のマーカーであるVimentinは, spindle-shaped cell, immature endothel ial cell-like cell, mature bloodvesselなどのendothelial cellに陽性であった。macrophage-like cel1はFactor-XIIIRaのみ陽性で, KSの病変部に多く見られたが, KSの構成成分の一種であるか, 反応性の増生であるかは不明であった。これらの結果より, KSの発生には自然環境, 生活様式などの因子とともに遺伝因子など, いくつかの因子が強い影響を与えていると考えられた。また, KSはparacortical areaのreticulin network近傍の多潜能なmesenchymal cellより発生し, 悪性腫瘍というよりは良性腫瘍, あるいは反応性疾患と考えられた。
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© 日本熱帯医学会
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