抄録
グアテマラにおけるオンコセルカ症浸淫の現状を知る目的で1973年11月から1974年1月にかけていくつかの流行地にあるフィンカ (農場) の住民を調査した。仔虫保有率はモンテ・デ・オロ農場住民の場合58.5%, ニマヤでは67.6%, ミランで46.1%であった。仔虫保有者は男児の場合, 女児よりはるかに高く, 以後保有率は両性とも年令と共に急増していた。この差は男性では小さい時からコーヒー収獲の労働者として野外で長く感染ブユにさらされているのが主因と思われる。ニマヤ農場ではオンコセルカ腫瘤保有者の調査を実施した。約200名の被検者のうち31名が腫瘤を保有していたが, 腫瘤はその半数が頭部に見出され残り半数が腰部から見出された。この事実は中米では腫瘤が頭部に集中するという一般的な見解に反していた。3個所で人をオトリに伝搬ブユのbiting collectionを実施したが捕獲されたブユの殆んどはS. ochraceumで残りの少数がS.metallisum, S. callidum及びS.exiguumであった。ブユのbiting密度は1日のうちで9時から15時までが最も高く, その密度分布はほぼ1峰性と考えられた。また4人の感染者皮膚内の時間別仔虫密度とブユのbiting密度の間に関連は見られなかった。更にオトリの身体部分で分けると下半身からも上半身と略同数のブユが採取された。4人の仔虫保有者についてマソッティ試験を実施し3人につよい陽性反応を見たのでその所見を記載した。今回の簡単なサーベイによってもグアテマラ共和国の流行地においては, オンコセルカ伝搬が従来どおりおとろえることなく継続していることが確かめられ, 改めて本症対策の重要性が痛感された。