Toyama Medical Journal
Online ISSN : 2758-6014
Print ISSN : 2189-2466
症例報告
Flow pattern changes in the nonmobilized right internal thoracic artery after coronary artery bypass grafting
横山 茂樹名倉 里織土居 寿男深原 一晃湖東 慶樹三崎 拓郎芳村 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 26 巻 1 号 p. 39-44

詳細
抄録
 両側内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術の有効性は広く報告されているが,一方で術後の縦隔炎の発生率の増加が懸念されている。今回我々は片側内胸動脈のみを使用した冠動脈バイパス術前後での反対側の内胸動脈(ITA)の血流状態の変化を比較検討した。
【対象】対象はCABG前後において両側内胸動脈の血流評価を施行した129例(男性98例,女性31例,年齢66.7±9.6歳)である。胸骨正中切開による冠動脈バイパス術(CABG)が65例,左開胸による冠動脈バイパス術(MIDCAB)が64例であった。ITAの血流測定には超音波ドプラー法を用い両側の第3肋間にてITA血流を測定した。術前の測定は手術前1週間以内,術後の測定は3週間目とした。末梢バイパス吻合数は平均2.4±1.1本。LITA-LAD bypassが127例,LITA-Dg bypassが1例,LITA-OM bypassが施行され,右ITAは全例温存されていた。
【結果】術前のITA血流はRITAが40.1±17.6 ml/minに対し術後のITA血流は温存されたRITAでは76.7±31.5ml/minと有意に増加を認めた(p<0.0001)。血流増加の特徴としては術前には乏しかった拡張期血流が,術後には著明に増加していた。アプローチ法による比較を検討すると,胸骨正中切開群はほとんどの症例でDFTRが1.0となっていたのに対し,左開胸群ではDFTRは1.0まで増加しなかった症例も散見された。
【総括】冠動脈バイパス術後の使用しなかったRITAの血流速度は,拡張期に著明に増加したことが明らかになった。このことは,拡張期に血流要求するような血管床が出現したことを示す。胸骨正中切開の場合,残存するRITAが治癒過程において非常に重要な血流源として働いていることが示唆される。
著者関連情報
© 2015 富山大学医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top