東海社会学会年報
Online ISSN : 2435-5798
Print ISSN : 1883-9452
地方周縁部の若者の「地元つながり」の脆さとトラッキング
予期的社会化に着目して
水野 遼太郎
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ジャーナル 認証あり

2025 年 17 巻 p. 68-81

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抄録
本稿の目的は,人口が減少する地方周縁部において「地元つながり」がいかにして脆くなるのかを解明することである.近年の地域再生をめぐる議論では,地域内外との多様な社会関係資本を醸成する重要性が強調されてきたものの,その地域で生まれ育った子どもや若者が「地元つながり」を築いていく上での困難を当人のトラックに沿って捉える視座は見落とされてきた.これに対して,本稿は,ローカル・トラック論における予期的社会化を分析の枠組みに据え,過疎地域出身の若者へのインタビュー調査を行った.これに基づき,過疎地域出身の若者のトラックをめぐる理解や認識が形作られ,「地元つながり」が不成立になる前提とそのメカニズムについて分析を行った結果,以下の知見が得られた. まず,過疎化という時間/空間的文脈において,家族や同輩集団との関係性のなかで「地元を離れる」というトラックを展望していく予期的社会化が形成される.その結果として道具的/表出的機能という基盤を欠いた「地元つながり」は成立が難しくなるとともに,地元定住型トラックもまた現実的な達成が困難になっていく.以上の知見は,都市部に偏って論じられてきた「地元つながり」の成立の前提を問い直すとともに,地域再生論における「つながり」に内在するジレンマを指摘するものである.
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© 2025 東海社会学会
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