2010 年 22 巻 4 号 p. 321-329
本研究の目的は,Point-Light display を用いた視覚情報の制限が,体操競技における技の認知に与える影響を明らかにすることであった.実験参加者は,体操競技を専門とする熟練者10名と器械運動の授業を履修した初級者10名であった.実験課題は,体操熟練者が技を行う際の関節に光点を置いて作成されたPoint-light 映像を観察し,呈示された技の種類を回答することであった.この時,呈示映像の光点は10,4,2 ポイントの3種類を呈示した.その結果,どの条件においても,熟練者は初級者よりも正答率が高く,少ない光点数においても高い正答率を保持していた.また,技の選択理由に関して,熟練者は力的表象が多く,初級者は視覚的表象が多かった.これらの結果は,熟練者が,自らの正確な技の遂行のために,技に関する正確な視運動イメージを有している可能性を示唆する.