繊維機械學會誌
Online ISSN : 1883-8715
ISSN-L : 0285-905X
鉄銹の発生機構とその防止
多賀谷 正義伊佐 重輝
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1951 年 4 巻 12 号 p. 690-694

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抄録

研究目的近年輸出向機械及部品、紡績用針、針布線等の防銹か問題となつて来たのでその基礎的研究として、我国の如き多湿の大気中においての新鮮な鉄面における銹の発生の機構を顕微鏡的に観察し、炭素鋼について炭素量、各種熱処理、表面仕上程度及び表面処理、鋼面附着物等の発銹に対する影響及ひ各種油の防銹効果を研究し、特に針布線について表面流出電流の測定により外国製針布線と国産針布線の表面状況を比較検討した。研究結果(1) 研磨した鋼面か大気中で発銹する場合、初期の鋸の形状は、顕微鏡的に点状、粒状、糸状、塊状に分類出来る。この内塊状鋸は急激に発達し所謂赤銹となる。鉄面への水滴の凝結により生ずる多数の粒状銹の内一部か発達して塊状銹となる。(2) 塊状銹は主にパーライト部面から発生しフエライト部面からは余り生じない。故に低炭素鋼程又表面を脱炭せしめたものは発銹は少い。(3) 0.6%炭素鋼では嶢入後450°で焼戻したものか最も耐銹性か大きい。(4) 鋼面への附着物の影響については、水溶性塩化物が最も発銹を促進し、金属粉末、珪砂等からはほとんと発銹しない。唯鉄粉、酸化鉄揚からは少しく発銹する。(5) 鋼面か完登な薄い不可視酸化膜之右する場合は余り発誘を見ない。故に乾燥室気中に或期間保存するか、0, 5%重クロム酸加里溶液等に或期間侵漬するか、適当な電解研磨乏すると鏡ひ難い。(6) 針布線について表面の薄い酸化膜の性質をオツシロクラフによる初期流出電流の測定より調べた結果、外国製針布線は匡隆針布線よりも緻密な酸化膜を有することか判つた。(7) 塗布する防鋳油としては動物性油か最も優れており、植物性油は稍々劣り、鉱物性油は遙かに劣る。なお焼入等により使い古した油は防銹効果か著しく減少する。

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