抄録
目的 糸や布のような繊維集合体の表面摩擦特性の研究の一連として, 布の表面と剛体との摩擦力を測定することにより摩擦力発生の機構解明を試みる.結果 まず, 布の場合にも繊維表面と剛体表面との摩擦成分μAとそれ以外の効果に基づく成分μBとの分離が可能であることを示した.そして, μBは摩擦時の布の圧縮変形に伴う内部摩擦損失―繊維間摩擦による内部損失―に基因するとの仮定の下に布の圧縮変形時の損失エネルギを別途に測定して比較検討した.その結果, μBの測定値と損失エネルギから計算した [μB] との間には高い相関のあること, ただし, 絶対値においてμBは [μB] の2～5倍あり合致しないことがわかった.摩擦子の移動前面付近での繊維集合体の変形が重要であることが示唆される.
