抄録
目的 織機の性能向上と機能拡大を図るため1各種の自動化装置が装着されるようになってきた.このうち, よこ入れ関連の装置においては, よこ糸の挙動を詳細に把握する必要から, 小型, 高精度かっ高応答な非接触糸速 度計の開発が望まれている.非接触速度計測方法には, ドップラー効果を利用した方法, 空間フィルタ法および光相関法などいくつかの方法があるが, なかでも, 光相関法は柔軟に装置を構成でき, 上記要求を満足する糸速度計に適した方法であると考えられる.本研究では, 高性能な糸速度計を開発し, 織機の性能向上に寄与することを目的としており, 本報では, 紡績糸ならびにフィラメント糸を対象に, その透過光強度を調べるとともに, 速度計を試作し, 構成諸因子が測定精度に及ぼす影響を調査した.成果 紡績糸およびフィラメント糸を一定速度で移動させ, 透過光強度信号の周波数分析を行った結果, 糸種および移動速度に応じて振幅スペクトルに違いがみられた.しかし, いずれの糸においてもスペクトルには, 卓越したピークは認められず, 信号はほぼランダム信号と見なすことができ, 光相関法を適用するのに好適であることがわかった。また, 試作速度計のスリット間距離やサンプリング間隔などを適切に設定した後, エアジェットルームのよこ入れ装置を静止台上に設置した試験機を用いて, メインノズル入口部近傍の糸噴射過程におけるよこ糸速度を計測した結果, レーザードップラー速度計とほぼ同等の精度で速度計測が可能であった.