抄録
タイ南部の西岸に位置するファンガ湾のマングローブ林内の6ヶ所で落葉の分解を実験的に測定した。マングローブの新鮮な枯れ葉を採集してナイロン袋に入れて海水中に浸漬し,その重量の減少を1 年間にわたり毎月測定するとともに,ナイロン袋内に入ってきた底生動物を調査した。落葉の分解(重量の減少)は初めの6ヶ月間は急速であったが,その後分解速度は徐々に低下した。落葉は8-12ヶ月以内に完全に分解された。分解速度は,ナイロン袋の潮汐に伴う海水への浸漬頻度に依存することが分かった。従って,分解速度はマングロープ林内または上流よりは,河口に近い場所で速かった。ナイロン袋内で見いだされたカニ類,多毛類,軟体動物,端脚類,星虫類などの底生動物がマングロープ落葉の分解に重要な役割を果たしていると考えられる。しかし,気象の季節変動は分解速度の促進には無関係のようである。