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西スマ卜ラ州の熱帯多雨林における極相種Calophyllum cf. soulattri の更新過程1981年の豊作年に成立した集団の個体群動態
Erizal MUKHTAR米田 健ZALFIATIMartis RAHMAN
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1998 年 7 巻 3+4 号 p. 183-194

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抄録

1981 年の大豊作年に誕生した集団の個体群動態の解析を通じて,極相種であるCalophyllum cf. soulattri の更新過程を考察した。1981 年と同規模程度の大豊作は調査した14 年間の過程を通じて発生しなかった。大豊作時に誕生した実生一稚樹集団の樹高生長速度は,母樹の樹冠下では母樹から遠ざかるほど高く,また死亡率が低下する傾向が現れ,その結果として時間経過とともに若木の最大個体密度が中心から周辺部へ移行した。生長速度に現れた母樹からの距離との相関性は,光条件の違いが距離に投影したものと解析した。大豊作によって誘導される動物による大量種子の広域分散が,本種のとくに幼木段階に適した生育地確保にとって不可欠と判断した。今回得られた幼木の定着確率を考慮して,すでに消えた祖母が存在した場所を推定し, 3 代にわたっての本種の更新過程を考察した。

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© 1998 日本熱帯生態学会
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