カリマンタンとジャワ島に作った50 個(合計17.8 ha) の調査区の植生データから,樹木の多様性について議論した。熱帯低地林で最も多様性が高く,山地林や二次林で多様性が減少した。西カリマンタンのほうが束力リマンタンよりも多様性の高い調査区があった。同じ植生地域ですぐ近くに作った1 ha の調査地問でも共通種は5ー7 割しかなく,別の州の調査地問でも数%は共通種が出現するが,その理由を種数面積曲線から推測した。
生態的な機能面での多様性を,風散布果実と材の比重から考えた。フタバガキ科は尊片が発達する風散布と,発達しない重力散布の果実を作るが,それぞれ著しい大きさの違いがあった。また,日本のカエデ属と比較してSJz orea の羽根は変異の幅が広かった。材も特にShorea では種による比重の差が著しく,このような生態的性質が異なる種を多数もつことがアジア熱帯林においてShorea 属の優占の一因と考えられた。他の種も材の比重において温帯林より変異の幅が広かった。このように,熱帯林では分類学的に多様であるだけでなく,生態的機能も面でもさまざまな種が存在するように思われた。