2021 年 52 巻 p. 27-39
本研究は,微分積分の概念が生徒の中で如何にして進展するのか,その学習の様相から明らかにしようとするものである。そのために微分積分概念の進展を探る教材として生徒が数学をつくることを意図して編纂された教科書である『数学第一類』に着目した。『数学第一類』では積分を和の極限から定義しており,極限を図表の操作に基づいて直観的に扱い,直観的に把握した事柄の中に論理を見いだしていく構造となっている。そして理念の大きな柱として生徒自ら数理を発見するということが掲げられている。そうした理念と問題の構造に着目し,筆者らが構成した活動に対するある生徒の反応を分析することから,『数学第一類』をもとに想定された活動が起こり,微分積分概念が生成され得るのかを,生徒の反応を分析することで実証的に明らかにした。