本研究の目的は,経済学部に所属する文系大学生の数学の能力を把握することで,大学における数学の効果的な学習指導の示唆を得ること,そして高校の二次関数の教育へつなげることである。目的を達成するために,公立大学経済学部第1 学年の学生を対象として,Google Form を用いた調査と数学基礎力テストを実施し,それらの結果を分析した。本稿は数学基礎力テストの中から,正答率が32.8%と低かった二次関数の最大値を求める問題に焦点を当てた。 分析の結果,文系大学生が二次関数の最大値を求める問題においてつまずきの要因となっているものは,手続きの未定着,平方完成の意味及びグラフの必要性の理解不足であった。特に一次関数の最大値・最小値を求める問題の解き方を利用して誤答になった答案が多かった。この結果から,平方完成を行う意味やグラフを用いる理由について,手続きや手段の側面のみならず根拠としての側面も理解させる必要があることが示唆された。