抄録
本論文では、法人課税の本質について考究するにあたり、法人税の転嫁と帰着、ならびに個人課税である所得税との統合の問題について考察する。日本における財政学研究の見地から、法人税の転嫁と帰着についての諸議論を整理し、法人実在説と法人擬制説の観点から検討を行う。そして、現行の法人税が法人擬制説に立脚し、法人税を個人所得税の前払いと捉えていることに鑑み、法人課税を個人課税と合算して捉えようとする統合問題に関して、その論拠、妥当性を考察し、法人税と所得税の不完全統合に包含する問題について指摘している。