本研究では,催眠による汎用性のあるリソースの活性化を目的とした自我強化法(Ego-Strengthening technique of Activates Generic Resources: ES-AGR)が心身の状態に及ぼす影響について,一般健常群を対象に検討した。その際,多くのリソースを動員してストレスに対処できると考えられる首尾一貫感覚(Sense of Coherence: SOC)の強い人々に注目した。調査協力者は,一般大学生16名であった。分析の結果,心身の状態のPre scoreとPost scoreに有意差が確認 されず,SOCの群別で検討しても同様であった。しかし,一定の効果量が示されたことから, SOCの弱い人々であっても,ES-AGR は肯定的な影響を及ぼす可能性が示された。また,2名の心身の状態は高い値から理論的中央値付近まで低下したが,いずれも自由記述の結果が肯定的であった。さらに,一部の調査協力者にリソースにアクセスしたと考えられる記述が確認された。