抄録
心理療法の専門職であるはずの催眠療法家に対する社会的信頼性は,催眠についての誤解や偏見の流布により,大きく損なわれている可能性がある。本研究では,催眠療法家に対する社会的信頼性の意識的・非意識的側面を,催眠を悪用する催眠術師と,心理の専門職の総称である心理療法家に対するそれと比較した。大学生47名を対象に,各専門家に対する意識的・非意識的信頼性得点をSD法とIATでそれぞれ得た。分析の結果,意識的・非意識的信頼性は,心理療法家>催眠療法家>催眠術師の順に有意に高いことが分かった。ただし,催眠療法家に対する非意識的信頼性は,心理療法家と催眠術師と比較した場合に正反対であったことから,中立的であるとは断言できないことが示唆された。催眠療法家に対する社会的信頼性を改善するには,催眠についての正しい情報の周知が必要であることが指摘された。