人間と環境
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Print ISSN : 2185-8365
場的宗教性における倫理という問題
吉田 喜久子
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2014 年 5 巻 p. 65-80

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抄録

創唱者宗教ではない神道には、もともと経典や教義のようなものは存在しない。このことは、倫理的規範の基本的拠り所も、創唱者の言行や教えを記した経典や聖書とか、あるいはそれらに基づいて形成された教義という形では、神道には存在しないことを意味する。教理や教義のような言葉による説明手段をもたない神道の宗教性の特性は、普遍主義的宗教ないし創唱者宗教の立場からは解りにくいとされて来たが、神道における倫理についても、同様である。神道が、教理や教義という形を取らず、祭祀というあり方を取ることで充分とされた来たのは、神道の宗教性が、場的性格を有することから来ている。敬虔という境位において、経験の場を開く、この自覚的営みが、まつり(祭祀)である。倫理という問題を考える手掛かりも、このことの中にある。

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© 2014 人間環境大学
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