抄録
西洋形而上学の根本にある存在概念は不変性と同一性とを本質としているが、これは人間の
認識においてのみ認められる特殊な性質である。不変性は同一性の条件であるが、同一性には
存在者としての格が与えられ特別の意義が付与される。この存在者という特別の格は人格と同
じ由来にあると考えられる。存在概念のこれらの特徴は「概念」一般と共有されており、「概念」
の本質から由来している。「概念」の本質は論理学において自同律、矛盾律、排中律に確認され
ており、論理的思考の根本条件になっている。「概念」を以ってなされる思考一般そして学問は
不変性と同一性を仮に承認する限りにおいてのみ妥当性を有する。そのため、世界や生、存在
などをはじめ概念一般は本質的限界を有しており、普遍的な概念への到達を目的としてきた学
問は目的や意義を失うことになると考えられる。