21世紀における持続可能な経済社会の創造に向けて
Online ISSN : 2436-7028
近代日本における山の資源活用からみた持続的地域社会の可能性
中西 聡
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2021 年 1 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

近代日本は、石炭・銅などの鉱物資源、木材類・薪炭などの林産資源、そして豊かな水資源を利用して盛んに行われた水力電気事業などを通して、家庭生活にとって「資源国」であった。本稿は、近代日本における山の資源利用のあり方により、第二次世界大戦後の資源問題の歴史的前提がどのように萌芽されたかを論じる。戦後高度経済成長期に、石炭から石油へのエネルギー転換が生じ、安価な石油輸入に頼りつつ、大量生産・大量消費の消費社会が成立したとされるが、消費者は、耐久消費財が安価に提供されたために、その資源問題意識は後景に退くこととなり、その後の資源問題をより深刻化させたと思われる。筆者は、持続可能な経済社会の創造には、企業の努力や政府の役割以上に消費者(生活者)の意識改革が重要と考えており、その際に、1900年代に見られた「エネルギー・資源の地産地消」の可能性が参考となる。当時は、石炭輸送コストの安い大都市で火力発電、水資源の豊富な山間部で水力発電により地域内向け電力供給が行われ、燃料材も輸送コストに応じて、薪材・木炭・石炭を棲み分けて利用された。こうした各地の風土を重視したエネルギー供給を目指す方向を探りたい。

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