抄録
害虫が食品流通中に混入した場合,移動や繁殖によりさらなる被害を生む可能性があるため,予防策を講じることが重要である.食品流通中に想定される荷下ろしや積替えなどによる衝撃により,混入害虫は破損した状態で見つかることも多い.本研究では食品に混入した害虫の形態的解析により,侵入時期などの推定のための破損情報の取出しを目的とする.貯穀害虫として重要であるコクゾウムシ,コクヌストモドキを対象とし,落下衝撃を与えた際の前胸背板の亀裂を評価した.供試した両種の死虫で落下高さが高いほど,亀裂全長が長くなる傾向がみられた.今回の亀裂を評価する手法では,害虫の胸部さえ残っていれば,亀裂を計測することで害虫が受けた落下衝撃の大小を推定できることが明らかになった.