2022 年 2022 巻 49 号 p. 1
『哲学の探求』第49号刊行にあたって
日差しに春の訪れを感じるこのような時候に、今年もみなさまに『哲学の探求』をお届けできることをうれしく思います。今回の『哲学の探求』第49号には、2021年度「哲学若手研究者フォーラム」(以下、若手フォーラム)のテーマレクチャーにてご登壇くださった先生方による2本の論文、そして個人研究発表を行ってくださった方々による10本の論文、計12本の論文が掲載されています。
2021年度の若手フォーラム(9月11~12日)は、東京オリンピックの延期および新型コロナウイルス感染症の流行により、前年に引き続き例年とは異なる日程・開催形態で行われました。いわゆるコロナ禍での緊急対応というかたちにはなりましたが、両日合わせて110名を超える多くの参加者に恵まれました。
テーマレクチャーは「現代認識論」をテーマに、レクチャラーとして飯塚理恵先生(関西大学)と萬屋博喜先生(広島工業大学)を、特定質問者として佐藤邦政先生(茨城大学)をお招きして実施しました。公募枠では、3件のワークショップと36本の個人研究発表が行われ、いずれも活発な議論が交わされました。個人研究発表では、ZoomでのオンラインミーティングとGoogleドライブによる紙面発表を併用するなど、前年度の反省を活かし、発表者だけでなく、参加者のみなさんがより参加しやすい形態を模索した次第です。
2021年度からの大きな改革として、運営委員に謝礼を支給することとなりました。これまで運営委員(旧「世話人」)は無償で若手ファーラムの運営にあたってきましたが、そのほとんどは大学院生およびオーバードクターであり、経済的に決して恵まれた身分ではないこともあって、「謝礼を出すべき」という意見は全体会でも数年にわたり提出されてまいりました。2020年度の全体会での承認を受け、今年度から謝金の支給を実現できたことは、若手ファーラムそのものの持続可能性を高めることにもつながり、よろこばしく思います。
若手フォーラムの特徴の一つでもある合宿形式での開催は、普段あまり会うことのない異なる所属や専門分野の研究者と出会い、お望みとあらば朝まで自由闊達に議論できる稀有な機会を提供してくれるもので、私自身、同世代の多くの研究者と知り合い、友人になることができました。とはいえ、会場の都合上、毎年東京での開催に限られ、遠方に在住の参加者には少なくない負担をかけてきたことも事実です。オンラインでの開催は、こうした地域格差の是正という点で魅力を有しているでしょう。また、子育てや介護などに従事し、休日に家を空けることが難しい方々にとっても、それぞれのペースで参加することを可能にしてくれるなど、メリットも少なくないように思われます。コロナ禍の収束がいつになるのか未だ予想がつきませんが、どのような開催形態が望ましいか・実現可能かを含め、今後も全体会などを通じて、みなさんとともに若手フォーラムをより多くの方にとって参加しやすく、また安全かつ安心して議論できる場にしていくことができれば幸いです。
最後になりましたが、校正をはじめ、編集作業にご協力いただきましたみなさまに深く御礼申し上げます。若手研究者が所属や専門に関係なく、自らの哲学的思索の成果を公にできる場はいまなお貴重なものであると思います。若手フォーラムおよび『哲学の探求』がみなさま一人ひとりの、そして今後の哲学業界全体の発展に繋がることを、運営委員一同願っております。
2021年度哲学若手研究者フォーラム運営委員・総務担当 石井雅巳