本研究では,「なにわの伝統野菜」のひとつである‘田辺’が有する根部の物性および糖含量の特性を明らかにするために,‘耐病総太り’を比較対照として,化学分析,物性調査,分析型官能評価により,その特性を調査した. 1. 生ダイコンの官能評価および破断試験の結果,「歯ごたえの強さ」や破断荷重等の硬さに関する項目に関して‘田辺’は,‘耐病総太り’より高く,歯ごたえが強いことが推測された. 2. 生ダイコンの糖組成を調査した結果,‘田辺’はスクロースとグルコースを主体とする糖組成であること,‘耐病総太り’とは異なる経時変化をすることが示された. 3. 煮ダイコンの官能評価および物性試験の結果,‘田辺’は‘耐病総太り’に比べて加熱中の軟化が緩やかであり,加熱後も硬い食感を持つことから,煮崩れしにくいと考えられた. 4. 以上の結果から,本研究では,伝統野菜‘田辺’は,‘耐病総太り’に比べて食感が硬く,煮崩れしにくいという調理特性を持つことを示したほか,外観,糖組成においても,‘耐病総太り’とは異なる特徴を有することが示された.