ユーザーが触れる情報が偏るフィルターバブル等の問題は,重要な社会課題である.先行研究や本研究の事前分析で,ユーザーに多様なニュースを読んでもらうことが,長期的には社会と事業者の双方に有益なことが分かっている.では,ユーザーの満足度を損なわずに,視野を広げて多様な記事を読んでもらうにはどうすればよいか.本論文では,ユーザーが記事をクリックした直後に,その関連記事かつユーザーが普段は読まないような記事を推薦する手法を提案する.因果推論の手法でニュースサービスの行動ログを分析した結果,提案手法の推薦を受けた介入群は,クリックした記事のGSスコアが0.029低い,つまりより多様な記事を読んでおり,短期的な満足度の指標のクリック率が1.1%高く,長期的な満足度の指標の継続利用率が6.2%高かった.これは,フィルターバブル等の問題を,事業者とユーザーにメリットがある形で解決できることを示唆している.