Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
大学卒業時の選択の短期的,長期的効果
―ストレートvs大卒無業vs留年vs大学院2年進学―
太田 聰一萩原 牧子
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2016 年 15 巻 p. 1-18

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抄録
本稿では,大学卒業時周辺に行われる就職時期を伸ばす選択,すなわち大卒無業(ブランク),留年,大学院進学の就業や年収に与える効果を,大学を 4 年で卒業してすぐに就職した場合と比較検証した。正社員確率については,初職段階でも調査時点段階でも大卒無業が最もネガティブな効果をもっていた。また,無業期間が 3 年超のほうがネガティブな効果が強い。ただし,「文系その他」の専攻では,初職段階での無業の大きなネガティブな影響は現職の段階で大きく縮小する。ひとつの解釈としては,文系の正社員希望者のほうが景気変動によって無業状態に陥るリスクが高く,そうした人々が長期的に状況を回復しているのかもしれない。年収に対する影響については,年齢をコントロール変数として用いた場合には,大卒無業は理系で 30%弱,文系その他で 15%程度も現在の年収を抑制する。大学院 2 年進学は 10%ほど理系の年収を引き上げ,文系その他では有意な引き上げ効果は観察されない。その一方で留年は理系で有意ではなく,文系では 19%程度現在の年収を低下させていた。ただし,これらは 4 年で大学を卒業してすぐに就職した同じ年齢の人と比べた場合の値であり,「経験年数のロス」と「能力の向上や就業先の質の変化の影響」の 2 つが混在している。そこで,後者を取り出すために同じ社会人経験年数で比べたところ,大学院 2 年進学は専攻にかかわらず約 2 割の年収増をもたらすことがわかった。また,大卒無業のマイナス効果は小さくなる一方で,「文系その他」で留年の効果は明確に残存していた。
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