抄録
長期化する新卒労働市場の需要過剰のなかで、日本企業の採用行動は多様化している。本稿では、インターンシップ実施やリファーラル採用、学歴を問わない採用枠設定や採用における多様性といった企業の採用行動の変化が、新卒採用にどのような影響を与えているのか検証した。具体的には、リクルートワークス研究所が実施する企業パネル調査である「大卒求人倍率調査」のデータを用いて、企業規模を区分し、個体間効果モデル及び固定効果モデルによる分析を行った。
当初の採用目標数に対する実際の採用者数の割合である新卒採用充足率を被説明変数とする分析の結果、個体間効果モデルでは、企業規模を問わず初任給額が、また、中堅・中小企業においては女性採用比率や大学成績の重視などにおいて有意な正の結果が得られた。他方で、固定効果モデルでは、大手企業におけるインターンシップ実施を除いて有意な結果を得られなかった。この結果から、新卒採用施策の効果は施策自体の効果は限定的であり、企業の人事組織上や経営状況の変化など、採用の外的要因の影響の結果であることが示唆される。