Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
新型コロナウイルス流行下での就労者の生活・業務環境と心理・行動
―4月調査と7月調査の比較を中心に―
江夏 幾多郎神吉 直人高尾 義明服部 泰宏麓 仁美矢寺 顕行
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2020 年 33 巻 p. 1-121

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抄録

筆者たちは,リクルートワークス研究所と共同して,新型コロナウイルス感染症の流行下における就労者の就労上の心理・行動とそれを取り巻く要因に関する調査を複数回行ってきた。本報告書は,2020年7 月末から8月初旬にかけて行なった調査結果を,前回調査(4 月実施)との比較を適宜行いながら,紹介するものである。分析対象は,2 度にわたる質問票調査の双方に回答を寄せた者のうち,3073人である。 主な発見事実として第一に,就労時間がコロナ禍前の水準へ回復しつつあり,所得変化についての急激な減少を予想する傾向が減るとともに,リモートワークの今後の希望については現状適応的な傾向が見られるなど,外形的な就業環境については落ち着きを取り戻しつつある。第二に,就業環境の変化に関しては,上司や同僚との関係性の希薄化や彼らから支援が得られるという認知の低下が見られると同時に,役割期待や成果内容の明確化が進んでいる。第三に,就労者の心理的側面に関し,4月から 3ヶ月が経ち,首尾一貫感覚が低下し,ある程度の不安感の水準が保たれている。第四に,過去にリモートワーク経験がある,オンライン業務に慣れている,完全リモートワークに従事している就業者ほど,リモートワーク時の生産性が高くなる傾向がある。最後に,COVID-19 感染リスクへの対処に関わる一部の行動について,2月,4月,7月の3時点間で揺り戻しが見られた。「マスク着用に努める」「手洗いに努める」などは人々の習慣として定着したものの,「ウイルス対策上必要なことを家族や周囲に啓発する」「旅行や遊びや趣味の集まりへの参加を取りやめる」など,他者との交流に関わるものに関しては,感染拡大フェーズにあった 4月をピークに,行動が減退している。

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© 2020 株式会社リクルート リクルートワークス研究所
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