2023 年 38 巻 p. 1-18
本稿では、リクルートワークス研究所「介護に直面した正社員の就業に関する調査」の個票データを用いて、介護発生前に個人が行う備えや会社による支援が、介護発生後の介護サービスの利用や専門家・家族との分担による介護体制の構築、職場での働き方等の見直しを通じて、介護離職や介護疲労に及ぼす影響を分析した。一般化構造方程式モデリングを用いた分析の結果、介護発生前の個人の備えや会社の支援が、介護発生後の介護体制の構築を通じて介護離職や介護疲労を防止する影響は確認できず、事前の地域包括支援センターへの相談や上司との介護についての会話が有効な介護体制の構築と負の関わりを持ち、結果的に介護離職や介護疲労と結びついている可能性が示された。また、介護発生前の会社支援は介護発生後の働き方等の見直しを促していたものの、働き方等の見直しは介護離職や介護疲労と直接関わりを持っていたほか、職場での不利益発生を通じて介護離職を促していた。