Works Discussion Paper
Online ISSN : 2435-0753
仕事からの引退は生活満足度を高めるか
坂本 貴志
著者情報
研究報告書・技術報告書 フリー

2021 年 52 巻 p. 1-11

詳細
抄録

総務省「労働力調査」より、高年齢者の就業率の時系列の変化をみると、2000 年初頭以降、急速に高まっている。こうしたなか、本稿では仕事からの引退が生活満足度に及ぼす影響を分析した。 本分析から得られた結果を要約すると、以下の通りである。まず、通常の OLS で回帰分析をしたところ、引退ダミーは大きくマイナスとなった。次に、パネルデータとして固定効果モデルで推定すると、係数は低下した。最後に、操作変数法を用いた分析を行ったところ、係数はプラスとなった。 パネルデータ操作変数法による分析に基づけば、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が実年齢を超過しているという事実をもとに引退の決定を判断している人に関してみれば、必ずしも生活満足度が低くないという分析結果が得られた。 通常の OLS やパネル分析の結果からは、一見すると、引退状態にあることと生活満足度が低いことは相関しているようにみえるが、これは必ずしも引退状態が生活満足度を低めるということではなく、生活満足度が低い状態の人が引退状態を選んでいるという事実を反映している可能性がある。

著者関連情報
© 2021 株式会社リクルート リクルートワークス研究所
feedback
Top