2022 年 58 巻 p. 1-13
本稿は、キャリア自律の観点から社内公募制度が社員に与える影響について分析した。特に、社内公募制度の運用過程に着目、つまり希望、選抜などが能力向上発揮、ワーク・エンゲージメント、リテンションにどのような影響を与えているかを検証した。分析の結果、以下の 3 つが明らかになった。 第 1 に、キャリア自律が高い人は社内公募に応募していることを確認した。企業が社員に社内公募に応募してほしいのであれば、キャリア自律を高めることで応募率が上がることが示唆された。第 2 に、キャリア自律に対して、上司の支援、職場の支援的環境、組織風土がキャリア自律を高めるのか、という点について確認した。分析の結果、上司の支援、職場の支援的環境、組織風土を表わす一部の尺度において有意に正の影響が確認された。第 3 に、キャリア自律が高まると、希望が叶ったほうがワーク・エンゲージメントに与える効果を高めることが示された。