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Print ISSN : 1881-0241
肝細胞癌における陽子線治療の普及を目指して
松崎 靖司
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2006 年 12 巻 1 号 p. 28-32

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抄録

本邦における第16回全国原発性肝癌追跡調査報告によると肝癌における治療に関しては、原発性肝細胞癌 (HCC) の手術施行率は31.3%、外科手術以外の治療法の状況は、PEI41.2%、MCT17.7%、RFA40.2%、TAE26.5% (リピオドールのみ、塞栓物質のみの合計) 、TACE72.7%であり、RFA、TACE、PEIが主流を占める。放射線照射療法はわずか1.5%である。肝予備能、腫瘍進展度など、肝細胞癌に対する主治療の選択には重要な関連がある。現在、HCCに対する多くの治療法は、それぞれ適応と限界がある。肝臓は放射線への耐容性が低く、従来は肝細胞癌に対する放射線療法が試みられてきたが、照射による肝機能低下のため積極的な治療法とはならなかった。
近年、放射線治療は限局部位への線量集中技術の進歩と共に適応も拡大され、選択的腫瘍照射法としてconformal radiotherapy、体幹部定位放射線治療や、陽子線、炭素線などの重荷電粒子線照射療法など本邦における肝細胞癌に対する放射線治療の進歩は著しく、有効性を示す成績も散見される。
このように今日放射線療法に関し、多施設無作為試験 (CRT) に基づくEBMではないが、HCCの集学的治療の一環としての放射線療法の有効性は、phase II試験として現代階では有効性を示唆する報告により支持されている。しかし、残念ながら、肝癌診療ガイドラインには放射線療法に関する科学的根拠に関する項目はない。つまり、phase I/II試験での有用性でもって施行されているのが現状である。

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